ポリャンスキー来日記念コラム

ソヴィエト・ロシアの名指揮者と名盤


 2015年7月、ロシアの指揮者ワレリー・ポリャンスキーが来日し、長期ツアーを敢行する。これを記念し、ソヴィエト・ロシア出身指揮者の中から、私が特に感銘を受けた指揮者とその名演を記録したCDについてまとめる。

エフゲニー・ムラヴィンスキー/キリル・コンドラシン/エフゲニー・スヴェトラーノフ/ルドルフ・バルシャイ/ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/ワレリー・ポリャンスキー/アレクサンドル・アニシモフ/アレクサンドル・ドミトリエフ/マルク・ゴレンシテイン/ヴィヤチェスラフ・オフチンニコフ(15.04.24追記)


■ワレリー・ポリャンスキー
 合唱指揮者としてキャリアをスタート。モスクワ音楽院でロジェストヴェンスキーに師事。管弦楽の指揮にも長ける。ロジェストヴェンスキーからソヴィエト国立文化省交響楽団を受け継ぎ、文化省室内合唱団と統合した「ロシア国立シンフォニー・カペラ」を率いる。
"ロシア国立交響楽団"の名称でCHANDOSに録音多数。合唱指揮の経験からか、パートバランスに注意し、音が濁らないように心がけているようだ。どのように鳴らすかよりも、どのように響くかに重きをおいているのかもしれない。このあたりは、チャイコフスキーの"聖金口イオアンの聖体礼儀"第6曲「ヘルヴィムの歌」やラフマニノフの"晩祷"第2曲を聴いてもらいたいところ。
 録音では、ボルトニャンスキーの合唱協奏曲からチャイコフスキー、ラフマニノフ、ショスタコーヴィチ、タネーエフ、グレチャニノフの交響曲まで、ロシアものを多く残している。やや大味に感じる曲もあるが(チャイコフスキーの交響曲第5番・6番、ムソルグスキーの『展覧会の絵』)、合唱曲やショスタコーヴィチの交響曲第7番の3楽章など、陶然とするような名演も多い。2015年7月来日予定。
【録音】
  • チャイコフスキー "聖金口イオアンの聖体礼儀"(ソヴィエト国立文化省室内合唱団(Melodiya))
  • ラフマニノフ "晩祷(徹夜祷)"(ソヴィエト国立文化省室内合唱団(Melodiya))
  • ラフマニノフ 交響曲第2番(ロシア国立交響楽団※ (CHANDOS))
  • タネーエフ "ダマスコのイオアン"(チャイコフスキー交響曲第4番とカップリング。ロシア国立交響楽団※ (CHANDOS))
  • ショスタコーヴィチ 交響曲第7番"レニングラード"(ロシア国立交響楽団※ (CHANDOS))
  • ショスタコーヴィチ 交響曲第12番"1917年"(ロシア国立交響楽団※ (CHANDOS))
  • ショスタコーヴィチ 交響曲第15番(ロシア国立交響楽団※ (CHANDOS))
  • ※ロシア国立シンフォニーカペラ
ロシア国立シンフォニー・カペラ
 1991年、ロジェストヴェンスキーとポリャンスキーの率いるソヴィエト国立文化省交響楽団・ソヴィエト国立室内合唱団を統合して成立。その沿革から、ロシア連邦文化省の管轄する組織となっている。1992年にポリャンスキーが芸術監督・首席指揮者に就任。
【ソヴィエト国立文化省交響楽団】
 ソヴィエトのラジオ放送拡大にともない、のちのモスクワ・フィルハーモニー管弦楽団の礎を築いた指揮者サムイル・サモスードを迎えて1957年に成立(「ソヴィエト連邦放送オペラ・シンフォニー管弦楽団」)。1983年、ロジェストヴェンスキーの亡命を警戒するソヴィエト指導部の意向により「ソヴィエト国立文化省交響楽団」として改組。芸術監督にロジェストヴェンスキーを据えた。
  • [首席指揮者]
  • ・サムイル・サモスード(1957-1964)
  • ・ユーリ・アーロノヴィチ(1964-1971)
  • ・マクシム・ショスタコーヴィチ(1971-1981)
  • ・ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(1981-1992)


■マルク・ゴレンシテイン
 1992年から2002年まで、ロシア連邦文化省の管轄組織である国立交響楽団『新しいロシア』の芸術監督・首席指揮者を務める。2002年からは、スヴェトラーノフ、ワシリイ・シナイスキーの跡を襲ってロシア国立交響楽団(かつてのソヴィエト国立交響楽団)の音楽監督・首席指揮者となる。
 第14回チャイコフスキー国際コンクールで、アルメニア出身のチェリストに対して人種差別的な発言をしたとする舌禍事件を起こす。また、高圧的・独裁的な言動や、不当ともいえる労働条件を提示し、楽団員との間にトラブルを生む。これらを理由としてロシアの文化大臣により音楽監督及び首席指揮者を解任された(2011年9月)。
 楽団と指揮者の間のゴタゴタは古今東西枚挙にいとまがない。人格者の駄演よりも、そうでない人の名演をこそ賞賛したい私としては、ゴレンシテインの恰幅の良い演奏を埋もれさせたくない。
余談だが、彼の公式サイトでほとんどの録音を聞くことができる。太っ腹である。
【録音】
  • ブルックナー 交響曲第7番(ロシア国立交響楽団(Melodiya))
  • マーラー 交響曲第9番(ロシア国立交響楽団(MDG))
  • グラズノフ 交響曲第4番(ロシア国立交響楽団(RUSSIAN DISC))
  • ラフマニノフ 交響曲第2番(ロシア国立交響楽団(TRITON))
国立交響楽団『新しいロシア』
 1990年、ロシア・ソヴィエト連邦社会主義国(英略記:RSFSR)評議会の命令により、芸術監督ドミトリー・オルロフを迎えて、RSFSR教育省の管轄楽団『子どもと青少年のための国立交響楽団』として成立。1992年、首席指揮者にゴレンシテインを迎える。
 1993年には(現)ロシア連邦教育省の管轄楽団として『ロシア国立教育省青少年交響楽団』に改名。1994年に教育省から文化省の管轄に移り、『ヤング・ロシア』と称されるようになる。このころ、ゴレンシテインは芸術監督・首席指揮者に任命される。
 1995年、文化省のもとで、『(文化省の)ロシア国立交響楽団』と改名。さらに、2002年にロシア連邦の国家機関である「国立交響楽団『新しいロシア』」と変更されて現在に至っている。
 現在の芸術監督・首席指揮者はユーリ・バシュメット。
【ロシア国立交響楽団("スヴェトラーノフ"国立交響楽団)】
 英表記で"The State Academic Symphony Orchestra of Russia"。
 1936年、「ソヴィエト国立交響楽団」として成立(音楽監督はアレクサンドル・ガウク)。ソヴィエト連邦崩壊後に「ロシア国立交響楽団」に改称。1965年から35年の長きにわたり、エフゲニー・スヴェトラーノフが音楽監督・首席指揮者を務めたことでも有名。
 スヴェトラーノフ時代末期、スヴェトラーノフはロシア国外のオーケストラを振る機会が多くなり、時の文化大臣ミハイル・シュヴィドコイから「ロシア国外での活動が多すぎる」と批判を受け、音楽監督・首席指揮者を解任された(2000年)。のち、シュヴィドコイの後任として音楽学者・政治家のアレクサンドル・ソコロフが大臣に就任したこともあり(文化・コミュニケーション大臣)、2005年にはオーケストラの名称に「スヴェトラーノフ」を冠することとなった。
  • [首席指揮者]
  • ・アレクサンドル・ガウク(1936-1941)
  • ・ナタン・ラフリン(1941-1945)
  • ・コンスタンティン・イワーノフ(1946-1965)
  • ・エフゲニー・スヴェトラーノフ(1965-2000)
  • ・ワシリー・シナイスキー(2000-2002)
  • ・マルク・ゴレンシテイン(2002-2011)
  • ・ウラディミル・ユロフスキ(2011-)


■アレクサンドル・アニシモフ
 基本テンポを忠実に守り、音の強弱に細心の注意を払う。モスクワ交響楽団とのグラズノフの交響曲、アイルランド国立交響楽団とのラフマニノフの交響曲の録音があり、ケレン味のないすばらしい演奏を聴ける(NAXOS)。
【録音】
  • グラズノフ 交響曲全曲(モスクワ交響楽団 (NAXOS))
  • ラフマニノフ 交響曲第2番(アイルランド国立交響楽団(NAXOS))
モスクワ交響楽団
 1989年発足のオーケストラ。モスクワ音楽院大ホールを本拠地とする。現在の首席指揮者はオランダ出身のアルトゥル・アルノルト(Arthur Arnold)。


■アレクサンドル・ドミトリエフ
 サンクトペテルブルク交響楽団の音楽監督・首席指揮者。
【録音】
  • チャイコフスキー 交響曲第6番"悲愴"(サンクトペテルブルク交響楽団※ (SONY))
  • ショスタコーヴィチ 交響曲第5番(レニングラード交響楽団※ (Linn Records))
  • ショスタコーヴィチ 交響曲第5番(サンクトペテルブルク・フィルハーモニー・アカデミック交響楽団※ (Manchester))
  • ※沿革的にすべて同一の団体。現在、"The D.D.Shostakovich St.Petersburg Academic Philharmonia(サンクトペテルブルク・フィルハーモニー協会)"という組織に、サンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団(音楽監督:ユーリ・テミルカーノフ)とサンクトペテルブルク交響楽団(音楽監督:ドミトリエフ)という2つのオーケストラが所属している。
【サンクトペテルブルク交響楽団】
 1931年にレニングラード放送の付属オーケストラとして設立。のちに「レニングラード放送委員会交響楽団」の名称を与えられる。
 第二次大戦中の首席指揮者はカール·エリアスベルク。ナチス・ドイツによるレニングラード包囲(1941.9-1944.1)の際にもレニングラードに残り(ムラヴィンスキー率いるレニングラード・フィルハーモニー交響楽団は疎開によりレニングラードを離れていた)、400回以上のコンサートを開催。1942年8月9日には、ショスタコーヴィチの交響曲第7番をレニングラード初演。1953年からレニングラード·フィルハーモニー協会の傘下に入り、第二のオーケストラとなって現在に至る。
  • [首席指揮者]
  • ・カール・エリアスベルク(1937-1950)
  • ・ニコライ・ラビノヴィッチ(1950-1957)
  • ・アルヴィド・ヤンソンス(1964-1967)
  • ・ユーリ・テミルカーノフ(1968-1976)
  • ・アレクサンドル・ドミトリエフ(1977-)


■エフゲニー・ムラヴィンスキー
 ソヴィエト時代を代表する指揮者。ソヴィエト連邦・共産党の陰湿な嫌がらせを受けながらも、レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団を長年にわたって率い、数々の名演を残す(数々の嫌がらせは、グレゴール・タシーの『ムラヴィンスキー 高貴なる指揮者』(アルファベータ)に詳しい。巻末にあるムラヴィンスキーのディスコグラフィは必携モノだ)。ムラヴィンスキーはテンポの伸縮ではなく、音の強弱を巧みに使い分けるタイプである(ポリャンスキー来日公演のパンフレットで初めて知ったのだが、ムラヴィンスキーはトスカニーニに師事したがっていたとのことである(平林直哉氏の解説より)。)。当時、世界最高とも言われたレニングラード・フィルもよくこれに応えている。
 ロシア国内でのライブ録音はデッドで中高音に寄った不思議な音質のものが多いので、スタジオ録音か西側でのライブ録音、晩年のデジタル録音がおすすめ。
 名演が数多いため、そのなかでも私が強く薦めるものを挙げた。少し異色ではあるが、サルマノフの交響曲は一聴の価値がある。曲のパワーに圧倒される。2000年代に入って何度か復刻されたが、1番から4番まで全てモノラルでの収録となっているようだ。以前ビクターが発売していたものは4番がステレオ録音だった。2番に関しては、RUSSIAN DISCからステレオ録音が出ていた(ショスタコーヴィチの5番とカップリング)。
【録音】
  • チャイコフスキー 交響曲第5番(1978年ウィーンライブ。レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(ALTUS))
  • チャイコフスキー 交響曲第5番(1982年レニングラードライブ。レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(ALTUS))
  • チャイコフスキー 交響曲第5番(1983年レニングラードライブ。レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(ビクター))
  • チャイコフスキー 交響曲第6番"悲愴"(レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(DG))
  • ショスタコーヴィチ 交響曲第5番(1973年レニングラードライブ。レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(ALTUS))
  • ショスタコーヴィチ 交響曲第5番(1973年東京ライブ。レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(ALTUS))
  • ショスタコーヴィチ 交響曲第5番(1978年ウィーンライブ。レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(ALTUS))
  • ショスタコーヴィチ 交響曲第5番(1984年レニングラードライブ。レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(ビクター))
  • ショスタコーヴィチ 交響曲第8番(1982年レニングラードライブ。レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(ALTUS))
  • サルマノフ 交響曲全集(レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(ビクター))


■キリル・コンドラシン
 モスクワ生まれ。モスクワ音楽院卒。ボリショイ劇場(モスクワ)の常任指揮者やモスクワ・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務めるなど、ロシア国内ではモスクワを中心に活躍。レニングラード・フィルとも録音を残す。コンセルトヘボウ管やウィーンフィルなど西側のオーケストラも振った。1978年に西側へ亡命。1981年、アムステルダム公演中の北ドイツ放送響をテンシュテットの代役で指揮(マーラー交響曲第1番(EMI))。大成功を収めるが、その夜に急死した。
 速めのテンポで切れのある演奏が多い。レニングラード・フィルや南西ドイツ放送響を指揮したマーラーの6番が切羽詰まったような感じを表現していてすばらしい。モスクワ・フィルの一部ライブ録音は、マイクが遠く迫力のない音のものがあるので注意(GLOBEレーベルのシベリウス3・5番など)。
【録音】
  • ブラームス 交響曲第2番(アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(PHILIPS))
  • ドヴォジャーク 交響曲第9番"新世界より"(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (DECCA))
  • マーラー 交響曲第6番"悲劇的"(レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(melodiya))
  • マーラー 交響曲第6番"悲劇的"(南西ドイツ放送交響楽団(hänssler))
  • シベリウス 交響曲第5番(アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(PHILIPS))


■エフゲニー・スヴェトラーノフ
 ソヴィエト国立交響楽団(のち、ロシア国立交響楽団)を中心に、ロシア国内外で活躍。爆音・爆演も多いが、キャリアが進むに連れてしっとりとした演奏スタイルに近づいた。レパートリーは広く、ロシアものに特に強い。ミャスコフスキーの交響曲全曲録音は一聴の価値がある。
【録音】
  • チャイコフスキー 弦楽セレナーデ(ロシア国立交響楽団(CANYON))
  • サン=サーンス 交響曲第3番(スウェーデン放送交響楽団(Weitblick))
  • ブルックナー 交響曲第8番(ソヴィエト国立交響楽団(Scribendum))
  • マーラー 交響曲第9番(スウェーデン放送交響楽団(Weitblick))
  • ラフマニノフ 交響曲第2番(ボリショイ劇場管弦楽団(victor))
  • ラフマニノフ 交響曲第2番(ロシア国立交響楽団(WARNER))
  • ミャスコフスキー 交響曲全集(ソヴィエト国立交響楽団・ロシア国立交響楽団(WARNER))
  • モソロフ "鉄工場"(ソヴィエト国立交響楽団(Scribendum))


■ルドルフ・バルシャイ
 ヴィオラ奏者出身だからというわけではなかろうが、弦楽の扱いが上手い。マーラーやショスタコーヴィチの大きな編成の交響曲においても、フレージングをきれいに整理し、濁りのない響きを作り出している。
【録音】
  • マーラー 交響曲第5番(ユンゲ・ドイチェ管弦楽団(BRILLIANT))
  • ショスタコーヴィチ 交響曲第7番"レニングラード"(ケルン放送交響楽団(BRILLIANT))


■ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
 ネットに上がっているものでも構わないので、一度その指揮ぶりを観てほしい。指揮棒のみならず、ポーズやジェスチャーも交えて奏者から音を引き出すさまは、まさに魔術師。容姿は「お茶の水博士」。彼の亡命を阻止するためにソヴィエト国立文化省交響楽団が組織されたという逸話も(その真偽や実情は措いておくとして)、彼の才能を語る上では必要なエピソードと言っていい。
【録音】
  • ブルックナー 交響曲第4番"ロマンティック"(ソヴィエト国立文化省交響楽団(ビクター))
  • ブルックナー 交響曲第5番(ソヴィエト国立文化省交響楽団(ビクター))
  • ブルックナー 交響曲第8番(ソヴィエト国立文化省交響楽団(ビクター))
  • ブルックナー 交響曲第9番(ソヴィエト国立文化省交響楽団(ビクター))
  • ショスタコーヴィチ 交響曲第5番(ソヴィエト国立文化省交響楽団(ビクター))
  • ショスタコーヴィチ 交響曲第15番(ソヴィエト国立文化省交響楽団(ビクター))


■ヴィヤチェスラフ・オフチンニコフ
 初めて買った"悲愴"のCDがオフチンニコフ(オフチニコフ)のものだったこともあり(VDC-1131(ビクター))、筆者にとって思い出深い指揮者。2014年にはチャイコフスキーの交響曲第5番・第6番、"ロメオとジュリエット"序曲などをまとめたCDが発売され、話題になったのも記憶に新しい(CDVE04414(venezia))。
 モスクワの南、ウクライナ寄りのヴォロネジ生まれ。作曲家でもあり、モスクワ音楽院でフレンニコフに学んでいる。1990年から翌1991年までカンザス大学で教鞭をとった。セルゲイ・ボンダルチューク監督の映画『戦争と平和』(原作:トルストイ)では、映画音楽の作曲を担当。中学・高校生の時分、いまは懐かしき光栄(現コーエーテクモ)のシミュレーション・ゲーム『ランペルール』にのめり込んだ身としては、親しみを覚える映画である。
 オフチンニコフの指揮・音楽は、ドラマチックな表現を求められる映画音楽に極めて強い親和性があると感じる(『戦争と平和』を観てもらえば、オフチンニコフがなぜ"悲愴"をあのように指揮し、録音させたかわかってもらえると思う)。この"映画音楽チック"なスタイルが、苦手な人をして「やりすぎではないか」と眉をひそめさせる原因のひとつであるのだが、私のようにオフチンニコフの指揮したCDで"悲愴"を初めて聴き、これを愛聴盤としたような人間にとっては、彼と同じくらいドラマチックにやってもらわないとむしろ戸惑ってしまう。
 "悲愴"を聴いて、彼のファンになったという方は、彼のホームページもご覧あれ。
【録音】
  • チャイコフスキー 交響曲第6番"悲愴"(モスクワ放送交響楽団(ビクターor"venezia"))

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