コラム4

HALLOO盤 ムラヴィンスキーのチャイコフスキー後期交響曲集


 かつて、アメリカのHALLOOというレーベルから、チャイコフスキーの後期交響曲集が出ていました([HAL09/10])。ムラヴィンスキー指揮/レニングラード・フィルの演奏によるこのCDは、解説や演奏日時が記されたライナー・ノート等が付いておらず、ケース裏に曲名と演奏時間が記載されていたのみであったため、演奏の特定をめぐって各種ネット掲示板を中心に物議を醸しました。
 結局のところ、このCDに収録されていたのは、グラモフォンの第4番(1960年ロンドン)と第6番(同年ウィーン)、ビクター・MELODIYAの第5番(1978年ウィーン)の演奏であり、(違法に?)他社保有の音源を使用したとみられる「寄せ集め」であったことが判明しています。これは演奏時間を比較しても明らかです。

曲番 録音 レーベル 楽章・タイム
第4番 1960 9 14~15 DG 18:50 09:18 05:50 07:58
HALLOO 18:36 09:17 05:48 08:04
第5番 1978 6 12 ビクター 13:28 11:38 05:28 11:13
HALLOO 13:24 11:31 05:26 11:27
第6番 1960 11 9~10 DG 17:41 08:08 08:22 09:49
HALLOO 17:34 08:05 08:19 09:53

表を見ると、いずれも他社音源とほぼ一致していることがわかります。HALLOO盤の第5番4楽章がビクター盤よりも長くなっているのは、演奏後の拍手が長く収録されているためであり、実際の演奏は同一です。
しかし、HALLOO盤の5番の音質は、ややノイズが多めながらも曇りのないものであり、ビクター盤よりも優れていると思います。ショス5のコラムでも触れましたが、ビクター盤における1978年6月ウィーンライブの音質は、いずれもノイズリダクションを強めにかけたような、やや曇りのある独特の雰囲気を持ったものでした。それはそれで価値のあるものではありましたが、もっとクリアな音質で聴きたいと思った方も多かったはずです。HALLOO盤は、発売の経緯の問題点はあるものの、このような愛好者の願望を一応満足させるものとして一定の価値があるものと思います。
 なお、2014年2月現在、Altusレーベルにおいて、ムラヴィンスキー夫人保有の音源を使用したウィーンライブの発売が告知されており、これが音質面において同ライブの決定盤になるのではないかと期待しています。

※以下の表は、新品・中古いずれかのかたちで入手が容易と思われるムラヴィンスキーのチャイ5の録音を簡単にまとめたものです。


録音 レーベル 規格番号 楽章・タイム 備考
1960 11 7~9 DG UCCG-40007 14:28 11:48 05:23 10:59 ウィーン ムジークフェライン
1965 2 21 SCORA scoracd011 14:03 11:28 05:14 11:00 モスクワ音楽院大ホール/ライブ
1972 1 30 Scribendum
(melodiya)
SC 034 13:51 11:47 05:22 11:47 モスクワ音楽院大ホール/ライブ
1973 4 29 ビクター音楽産業(melodiya) BVCX-4001 13:31 11:31 05:22 11:09 レニングラード・フィルハーモニー大ホール/ライブ
1977 10 19 Altus ALT052 13:44 11:51 05:34 11:39 東京NHKホール/ライブ
1978 6 12 ビクター音楽産業(melodiya) VDC-1008 13:28 11:38 05:28 11:13 ウィーン ムジークフェライン・ザール/ライブ
1982 11 6 Altus ALT192 13:43 12:29 05:33 11:36 レニングラード・フィルハーモニー大ホール/ライブ
1982 11 18 Dreamlife DLCA-7017 13:10 11:34 05:24 12:43 モスクワ音楽院大ホール/ライブ
1983 3 19 ビクター音楽産業(melodiya) 13:59 11:49 05:36 11:23 レニングラード・フィルハーモニー大ホール/ライブ