テンシュテットに打ちのめされる
91年にテンシュテットが指揮したこの曲を聴いたあと、人が変わってしまったのではないかと自分自身を疑っている。それほどまでに私は"音楽"に打ちのめされた。この体験を整理したり、論理的に文章にしたりすることは無理のようだ。ただ、この演奏を聴いて以降、健全な社会人としての資質は落ちたように思う。
この演奏を初めて聴いたときの衝撃。実際とんでもないものだった。第一楽章冒頭の弦の入りかたからして、すでに異常でとてつもない緊張感がある。カウベルでさえ不気味に鳴らされ、全く息つく暇もないほどだ。第二楽章に入っても緊張感は増す一方で、いよいよ精神的に参りかけたころに一見おだやかな第三楽章に入るのだが、実はこの楽章こそ曲者だった。見かけはゆったりとしてロマンティックなのだが、聴けば聴くほど『悲劇』を感じざるを得ない。思い起こさざるを得ないのである。この楽章にこそ第6交響曲のメッセージが結晶している。
第四楽章に入ると、前楽章とは一転、交響曲第二番「復活」で作曲者が見せた「救済」が待っているかのような曲となるが、残念ながらもはやマーラーは我々に救済を与えてはくれなかったことを思い知らされることになる。救いの手を打ちつぶすかのように、巨大なハンマーが鳴らされ、最後は炸裂した音のなかで曲を閉じていく。
こんな演奏を聴いてしまったら、世界に救いなどないのだと、ヤケになってしまうのも仕方がない。
キリル・コンドラシン/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団
16'20,11'43,12'40,24'40 [1978年]
速いテンポで押し切った名演。SWR響との演奏もそうであるが、コンドラシンは特に第一楽章において、究極に切羽詰まった「悲劇」を表現をしている。
(Melodiya)
★★★
キリル・コンドラシン/SWR交響楽団
17'07,12'17,13'31,25'25
(hänssler)
★★★
ヴァツラフ・ノイマン/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
(CANYON)
★★
アラン・ロンバール/レジデント管弦楽団(ハーグ・フィルハーモニー管弦楽団)
21'19,12'22,18'19,28'11 [1986年10月]
打楽器を際立たせたドラマティックな表現が多いが、低音を強調しないため、全曲を通してヴァーグナーのオペラのような雰囲気がある。『リエンツィ』序曲に続いて演奏されてもおかしくない。
(自主制作)
★★
ハルトムート・ヘンヒェン/ネーデルラント・フィルハーモニー管弦楽団
23'13,15'55,17'38,28'53 [1991年10月8,11,12日]
コンセルトヘボウでのライブ録音。
(BRILLIANT)
★
クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
24'36,13'03,17'22,32'57 [1983年4,5月]
(EMI)
★★★
クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
23'22,12'58,17'05,31'16 [1983年]
プロムスでのライブ。
91年の演奏に肩を並べる名演。91年よりも端正であるが、それでも漆黒の闇のドロドロを表現し切っている。
(Sardana records)
★★★
クラウス・テンシュテット/ニューヨーク・フィルハーモニック
23'51,13'17,16'54,30'48 [1985年]
テンシュテットがロンドンフィル以外のオケで『悲劇的』を振った貴重な記録であるが、なんとも録音が悪い。大きな音は歪んでしまい、この曲のダイナミズムを感じることができない。
(RARE MOTH)
★
クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
25'33,14'12,17'44,33'29 [1991年11月]
バーンスタインの『復活』同様、「やり過ぎ」と眉をひそめる人もいるかもしれない。それくらい圧倒的で、他の追随を許さない演奏。とにかく一度聴いてほしい。
(EMI)
★★★
ガリ・ベルティーニ/ケルン放送交響楽団
24'03,13'36,16'16,29'23 [1984年9月]
(EMI)
★★
ラファエル・クーベリック/バイエルン放送交響楽団
21'07,11'44,14'40,26'35 [1968年12月7,8日]
(DG)
★
トーマス・ザンデルリンク/サンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団
23'30,12'24,14'53,30'20 [1995年7月2-4日]
(RS)
★★★
ネーメ・ヤルヴィ/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団
20'01,11'32,13'37,27'07 [1992年11月8-9日]
(CHANDOS)
★★★
サイモン・ラトル/バーミンガム市交響楽団
25'36,16'51(A),13'18(S),30'32 [1989年12月]
(EMI)
★★
ベルナルト・ハイティンク/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(PHILIPS)
★★
ベルナルト・ハイティンク/フランス国立管弦楽団
19'02,13'15,14'33,31'32 [2001年10月]
(naive)
★★
ベルナルト・ハイティンク/シカゴ交響楽団
25'56,14'23,16'12,34'10 [2007年10月18-20日]
(CSO)
★
ジュゼッペ・シノーポリ/フィルハーモニア管弦楽団
25'08,13'33,19'48,34'28 [1986年9月]
(DG)
★★
ジュゼッペ・シノーポリ/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
22'59,13'39,17'37,31'05 [1986年9月19日]
(Pandra's BOX)
★
クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦管弦楽団
22'48,13'57(A),12'43(S),29'44 [2002年6月]
(DG)
★
レイフ・セーゲルスタム/デンマーク国立放送交響楽団
(CHANDOS)
★★
ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団
(DECCA)
★
エフゲニ・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団
22'59,12'25,15'37,29'49 [1990年]
モスクワ音楽院大ホールでの録音。
(harmonia mundi)
★★
エリアフ・インバル/フランクフルト放送交響楽団
24'24,14'46,14'36,30'03 [1986年4月24,26日]
(コロムビア)
★★
リカルド・シャイー/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
25'35,13'17,14'40,30'59 [1989年10月]
(DECCA)
★★
ジョン・バルビローリ/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(EMI)
★
アントニ・ヴィト/カトヴィツェ・ポーランド国立放送交響楽団
23'43,12'53,16'08,31'13 [1992年12月15-19日]
(NAXOS)
★★
レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック
21'28,12'24,15'19,28'42
(CBS)
★★
レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(DG)
★★
ズビン・メータ/イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
21:54,12:40,14:47,28:30 [1995年4月]
(Warner)
★
ハインツ・レーグナー/ベルリン放送交響楽団
24:52,14:52(A),12:00(S),30:33 [1981年]
ベルリン・キリスト教会での録音
(徳間ジャパン)
★★
ファビオ・ルイージ/MDR交響楽団
24'09,13'52,18'14,31'56 [1998年2月7,8日]
(VKJK)
★★
クリストフ・フォン・ドホナーニ/クリーヴランド管弦楽団
(DECCA)
★
ピエール・ブーレーズ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(DG)
★
マイケル・ティルソン・トーマス/WDR交響楽団
23'33,13'24,16'18,30'56 [2008年2月22日]
(Harvest Classics)
★
ウラディミル・フェドセーエフ/モスクワ放送チャイコフスキー交響楽団
19'47,12'53,14'03,30'31 [2001年5月25-31日]
(RELIEF)
★★
ミヒャエル・ギーレン/バーデン=バーデン・フライブルク・SWR交響楽団
24'51,14'29,14'46,30'40 [1999年9月7-10日]
(hänssler)
★★
ロリン・マゼール/バイエルン放送交響楽団
(En Larmes)
★★