アレクサンドル・ティトフ/サンクト・ペテルブルグ交響楽団
14'39, 11'51, 11'23, 14'16 [2009年]
ティトフ/ペテルブルク響コンビによる『Wartime Music』の第9集。このシリーズはハズレのない名演ばかり。
いろいろ考えさせられる曲である。
有名な『鉄工場』など、アヴァンギャルドな作品を世に問うたモソロフ。現代音楽協会(ACM)でも重きをなしたが、社会主義的リアリズムに反するとして体制側作曲家たちの度重なる攻撃をうける。その挙句が、身柄の拘束と8年間に及ぶ強制労働。鋭利で革新的な音楽を作るモソロフは、もういない。耳あたりのよいメロディと、高らかな勝利を歌う交響曲がそこにある。しかし、『本当はこんなもんを作りたいんじゃない』という、彼の皮肉が曲のそこかしこに透けて見えている。過酷な強制労働は彼から健康を奪ったが、信念までは奪うことができなかったことを、聴く者は知るだろう。
この曲はいちど実演を聴いてみたいが、日本では難しいかな。
[Northern Flowers]
★★★